音楽の成績はB判定 「まさか音楽の道に行くとは思わなかった」
- ― どんな「13歳」でしたか?
- 林ゆうき 部活は卓球部になんとなく入って、半年で幽霊部員になりました。背も小さかったですし、勉強もできなかったです。技術や図工は好きでしたけど、音楽は全然ダメでB判定。そんな13歳でした(笑い)。まさか音楽の道に行くとは思わなかったですね。仲良い友達と“わっきゃわっきゃ”やっているときは、「林面白いなー」とか言われるけれど、集団のところでは影を潜めていました。クラスにいる明るいキャラクターが羨ましいな~と思うような、「陽キャ」になりたい「陰キャ」みたいな人でした。友達は多かったですが、“パーティーピーポー”みたいな人たちとは触れ合っていなかったです。
- ― 音楽には全く触れていなかったのですか?
- 林ゆうき 僕の年齢は、世代というわけではないんですが、うちの仲の良い友達界隈で尾崎豊が大ブームだったんです。みんなが歌ったり、ギターで弾いたりしていたから、ムーブメントに乗り遅れてはいけないと、尾崎の曲をギターで弾いていました。でも、「D」というコードがどういう音でできているのかもわからない。ギターコードブックに書いてあるものを見て押さえているくらいのことで、商業的なことができるようなレベルではなかったです。音楽はちゃんとは習っていなかったですね。
- ― ピアノは全くやっていなかったのですか?
- 林ゆうき そうですね。でも、たとえば美容師さんで「3歳からはさみを持っていました!」という人はいないじゃないですか? 今は、(音楽制作で)やろうとしているものが決まっているんだったら、コンピューターで再現できることが多いですし、小さい頃からやっていなくてもできる環境が整っていて。音楽は身近にできることではあるんです。
- ― 音楽にはいつ頃からシフトしていったのでしょうか?
- 林ゆうき 大学生の時に男子新体操の選手をやっていたのが一番大きいですね。後ろに流れている伴奏音楽が、同じ振り付けでも、「Aという曲」と「Bという曲」で人に与える印象が全然ちがうというのがものすごく面白くて。なんでこんなに違うんだろう?と思って、音楽の与える力ってすごいんだなって。好きな選手のビデオを見るなど、新体操のバッググラウンドミュージックをずっと聞いていました。
大学3年生ぐらいから、趣味で伴奏音楽をやりたいと思って。実際に頭に浮かんでいるけど、人に言ってもその通りに作ってもらえないというのがすごくもどかしくて、自分でやってみようと思ったのがきっかけでした。僕は、音楽が好きなんじゃなくて、映像などに音楽がかかった瞬間が好きなんです。すごくハマるのが、めっちゃかっこいい! でも、思い通りの曲を探してもなかったりする。じゃあ作ってみよう、と。たとえるなら、料理人の人が「自分の料理を盛る理想の最高のお皿がないから陶芸家になりました」みたいな感じです。新体操を通過せずに音楽家になったとしても、今のようなことはできなかったと思うので、色々やってみることは大事だなとすごく思います。 - ― 今、新しい一歩を踏み出そうとしている“13歳たち”にメッセージを送るとするなら?
- 林ゆうき 13歳ぐらいで自分のやりたいことが明確に決まっている人なんて、特殊だと僕は思うし、9割が決まっていないと思います。やりたいことが決まっていないということは、言い換えれば何でもできるということ。何でもいいから自分が興味のあることにトライするのが一番いいと思います。たとえば、「このギタリストのこの音が好き」「なんてギターなんだろう?」とそこから楽器のことをすごく調べるかもしれない。でも、それって時間がないとできない。13歳ぐらいの時期は、一番時間がある時期だと思うし、自分で調べて動ける時期だと思うので、“やりたいことが何もない”という贅沢を楽しめばいいと思いますね。

「僕らの音楽も、楽しんでもらえたらすごくうれしい」
- ― 「青のミブロ」の劇伴を担当されました。制作の裏側を教えてください。
- 林ゆうき プロデューサーさんとの打ち合わせでは、「部活」「青春群像劇」「時代劇だけれど古い感じにはしたくない」というお話を聞いていたので、アニメを見てくれる今の子が楽しいなと思ってくれるといいなと思って作りました。僕の中では、打ち合わせの時になんとなく(曲のイメージが)できているような形で。そういう意味で言うと、あまり悩まずに制作することができました。
- ― 「青のミブロ」ファンに向けて、メッセージをお願いいたします。
- 林ゆうき 「青のミブロ」を作る上で、たくさんの人が参加されています。そのみんなが13歳の頃を通過して、“おじさん”や“おばさん”になり(笑い)、それぞれのフィールドで作り上げてできたものを皆さんに見ていただいています。「青のミブロ」という作品を大事にしていただきたいし、愛していただきたいです。作品を楽しんでいただくと同時に、音楽というフィールドで戦っている僕らの音楽も、改めて楽しんでもらえたらすごくうれしいです。
