阿座上 洋平

声優阿座上 洋平

#06
#06

「100回に1回、あるか無いかの良い芝居」その手ごたえが今の自分を作り上げた

声優 土方歳三役 
阿座上 洋平

「13歳の青」第6回のゲストは、TVアニメ『青のミブロ』で「土方歳三」役を務める、阿座上洋平さん。作中では、主人公・におをミブロに引き入れた張本人でもあり、世の中を良くしたいと本気で思っている土方を、クールにそして熱く演じています。アニメのみならず多岐に活躍する阿座上さんは「13歳の頃」どのような少年だったのか。そこには知られざる過去と、当時の葛藤がありました。

充実していた中学時代

どんな「13歳」でしたか?
阿座上 小学校の頃は男だけでつるんでいましたが、ちょっとずつ女の子たちとも話すようになって。社会というものを知っていったタイミングでした。不良もいる荒れた中学でしたが、当時の僕はわりと色々な人と関わりを持てるタイプで、みんなと仲良くできていて。色々な人間がいて楽しかったです。勉強はそこそこできたし、部活も楽しかったし、充実していました。
部活は何をやっていましたか?
阿座上 スイミングスクールに入っていたので、最初は水泳部に入っていました。タイムを競う、という感じではなくて、「涼しいから」「泳ぐのが好きだから」くらいな気持ちでしたね(笑い)。水泳って基本的には個人の戦いなので、チームプレーに憧れていて。当時、「スラムダンク」を読んでいたのでバスケをやってみたいなぁと。友達もたくさんいたので、中学2年からバスケ部に入りました。
“今の自分”について、“13歳の頃の自分”はどんな風に思うと思いますか?
阿座上 「マジ?」って、声優をやっていることに対して驚くと思います。当時は、お芝居ってあまり好きじゃないというか……うちの父親が舞台に出ていて、その練習をしている姿をよく見ていたので、なんか嫌だったんです。“自分じゃなくなっていく姿”を見させられるのが嫌でした。父親は僕が小学5年生の頃に亡くなっているのですが、今僕が声優業についているということに、たぶん驚いていると思います。自分では絶対こういう道は選ばないだろうなと思っていたのに、不思議ですね。
ご自身の中で、声優業を意識されたのはいつ頃だったのでしょうか?
阿座上 高校に入って、アニメに触れ始めてからです。「化物語」「涼宮ハルヒの憂鬱」など、当時流行っていたアニメは、その頃に一番見ていました。中学時代と比べて高校時代は逆に暗いんですよ。進学校だったので勉強についていけず、友達もあんまり馬が合わないというか……。深夜アニメを見たのが中学2年生で、「こんな世界があるんだ!」とちょっと興味を持って、高校になってより加速した感じです。声優業を意識して、高校では演劇部に入りました。
今、新しい一歩を踏み出そうとしている“13歳たち”にメッセージを送るとするなら?
阿座上 実は、高校に入ってから、不登校とまではいかないんですけど、学校がめんどくさくなって全然行かなくなったんです。色々な事情があって、学校に行けない子達もいると思うんですけど、もし僕と同じように「めんどくさいな」くらいの気持ちでいるんだったら、学校は行った方がいいなと思います。僕は高校に行けなかった分、今通いたいと思っています。あのときの雰囲気って、あのときでしか味わえないから。勉強や運動ができなくてもいいんですよ! あの時間って、人生でいうと本当に一瞬で、限られた時間だから……。とりあえず、学校に行ったら何かドラマが生まれるから、楽しめ!って思いますね。そこで「自分」が形成されていったので。きっといろいろな事情があるのだろうけど、それでも学校に行ったら何か始まると思う。何か見つけてほしいなと思います。

100回に1回、「今日めっちゃいい芝居したな」と思う日があるんです

「青のミブロ」という作品の印象や、土方歳三を演じる際に大切にされていることを教えてください。
阿座上 3人の子どもたちを中心に描かれていくのが面白いですね。実在したかどうかはわからない人物たちが、色々な人たちと関わっていく。その目から見える激動の時代、思想、価値観っていうものが面白いなと思います。中学時代、歴史だけは苦手だったんですけど(笑い)、「土方歳三」という人物を知っていくとすごくやりがいがあるキャラクターだなと思います。これまで「土方歳三」というキャラクターをたくさんの人が演じている中で、「青のミブロ」でしか描けない土方、僕でしか演じられないという土方、というのを見つけていきたいなと思っています!
収録中に心がけていることについて。
阿座上 原作でも出てきますが、「俺は土の人間だ」っていうセリフがあって。彼の弱さや人間味があるところを一番大事にしたいと思っています。「かっこいい」とか「強い」とかそういったものももちろん大事ですけど、そこだけではなくて、彼が持っている「弱さ」は必要なんじゃないかなと思っています。
収録では、声優さん同士で話し合ったりされますか?
阿座上 個性的なキャラクターを、個性的な声優さんたちでやっているので、収録はすごく面白いし、楽しいです。「こうやろう」とか、「僕はこうやるので、こう来てください」という話し合いはあまりしないですかね。自然と調和していく感じです。収録では和気あいあいとしていますが、それでも緊張感はありますね。
事前に準備していったものが、収録現場で変化することは多いですか?
阿座上 もちろんありますし、そうあるべきだと思います。自分一人で「こうやろう」と思ったものを出すだけでは、声優全員で録っている意味がないので、事前にある程度作ったら、収録現場で「ちょっと足してみよう」「ちょっと引いてみよう」などとやるべきだと思っています。
声優業で一番「楽しい」と思われるときはどんなときですか?
阿座上 僕にとっては、だいたい声優の仕事が100回あったら1回が楽しいなと思うぐらいで、全然うまくいかないことの方が多いんです。99回はもっとできたなという感じがあって。でも、100回に一回、下手したら1000回に一回、「今日めっちゃいい芝居したな」と思う日がある。そういう日は他の人にもそう言ってもらえる事が多くて、「ああ、間違いじゃなかったんだ」と思います。その解釈が合致したときに「やめらんねーな、この仕事!」と思うんです。つらいこと、難しいことの方が多いですが、あの気持ちをずっと追っちゃっています。
「青のミブロ」の放送を楽しみにしている方たちへメッセージをお願いいたします。
阿座上 現代人がちょっと忘れているかもしれない当時の血の匂いや志……そういうものをどこか蘇らせるようなお芝居ができたらと思っています。先ほどお話しした100回に1回の「めっちゃいい芝居したな!」が出せるように、皆さんにお届けできたらなと思っています。「青のミブロ」を見て熱くなってほしいですね!
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