堀江 瞬

声優堀江 瞬

#05
#05

「夢を持ち続ける覚悟」がある人は、その情熱を大事にしてほしい

声優 田中太郎役
堀江 瞬

「13歳の青」第5回のゲストは、TVアニメ『青のミブロ』で「田中太郎」役を務める、堀江瞬さん。主人公「にお」と同世代ながら、過酷な人生を歩んだ末ミブロにたどり着いた苦労人の「太郎」が持つ光と闇、その難しい太郎の心情を見事に表現しています。これまでに、アニメやゲームで様々な人気作に出演している堀江さんは、どのような「13歳」だったのか。そこには、声優という“夢”に向かうための準備に邁進する、堀江さんの姿がありました。

中学生のときに「声優になりたい」と決意

どんな「13歳」でしたか?
堀江 色々な意味で制約の多い生活でした。めちゃくちゃ家が貧乏だったので、選択肢が狭まって。「ウチはあまりお金がないから、こういうことはできないよな」と決めつけをして、全然楽しくない中学校生活を過ごしていました。どんどん自信もなくなってきて、周囲とのコミュニケーションをあまり取らないようになっていったのも、13歳の頃だった気がしています。小学生の頃は、自分から色々な人に声をかけたりしていたんですけど、些細なところで、“持っている人”と“持っていない人”の違いをなんとなく肌で感じたりしていくうちに、どんどん塞ぎ込んでいきました。
当時、夢や目標は持っていましたか?
堀江 はい。中学生のときに「声優になりたい」と言っていました。(周囲に)夢を打ち明けたりするのは高校の頃ですが、親からは「なれるわけない」と言われて。先生からも基本的に応援してもらえなかったんです。なので、親と教師を騙して(笑い)“大学に進学する”というレールを歩み始めました。「僕はそこしか考えていませんよ」という風に装って、大学に通いながら自分でお金をためて、声優の養成所に勝手に入って。勝手に声優になりました!(笑い)。
声優になりたいと思ったきっかけはありましたか?
堀江 アニメ「名探偵コナン」で、声優の高木渉さんが、子供の「元太くん」と大人の「高木刑事」という全く違う役をやられていて。あるときは、その二人が会話していることもあって、そこで声優という仕事を意識しました。もともと声にコンプレックスがあって、からかわれることもあったんです。声優になるために色々調べていくと、「普通に学校生活を過ごすのがいい」とアドバイスが書かれていたので、あえて何もしない普通の学生生活を送っていました。とはいっても、友達とかそんなにいなかったので、ただの陰気な中学生が、ただただ日々を過ごしていた、というだけなんですけど……。それでもやっぱり意味はあったと思います。卑屈な部分や、鬱屈としたところって、今も役をやるときにすごく理解できて演じられるのでよかったのかなと思います。とはいっても、若ければ若いほど、色々な物事が有利に動くというのは、すごく感じていて。もっと早く養成所にも通えたらよかったなというのはあります。もし応援してくれる環境があるなら、早めに動いておくのもいいと思います。早い段階から見切りをつけられることができるだろうし……。でも、動けなかったとしてもそれは間違いじゃなくて、僕みたいに自分でちゃんと動けるようになってから動くのも遅くはないと思います。
“今の自分”について、“13歳の頃の自分”はどんな風に思うと思いますか?
堀江 えー難しい! どうだろう……。この仕事ができている点では、夢をかなえているように見えるから、「よかったねー」って思うのかもしれないです。ただ、いざ声優になってみると、学生のころに抱いていた声優のキラキラしたイメージは、ファンのために見せてくれていた部分だったのだと感じます。声優ということでキラキラしているように見えるかもしれませんが、その“キラキラ”は1割にも満たないぐらい(笑い)。残りの9割は、苦しみしかないんだ……と。実は大学に通っていた頃、就職活動をしていて、内定をいただいていたんです。そのタイミングと、「アイドルマスター」という作品で初めてオーディションに受かったタイミングが同じくらいで。もしあの頃に戻れるなら就職しているかもしれないです(笑い)。「本当だったらこんなふうにできているはずだった」と自分が思い描く理想像とのギャップがどうしてもできてしまうところがあって。そうしたときに結構僕は折れてしまうタイプなので、今はその苦しみとどう向き合いながら、この仕事をやっていけばいいんだろう?と考えているところではあります。生半可な覚悟でなるべき仕事ではなかったなと。
今、新しい一歩を踏み出そうとしている“13歳たち”にメッセージを送るとするなら?
堀江 この記事を読んでいる人に伝えたいのは、いま夢を追いかけている人、その情熱は本当に正真正銘の本物だと思うんです。その気持ちを本物のまま、持ち続ける覚悟があるんだったら、その夢を一番に優先して、これからの人生を歩んでほしいなって思いますね。でも、まわりの人に夢を応援してもらえない人の方が多いと思うんです。若いうちってそれがすべてだと思いがちですが、「今自分が置かれている環境が世界じゃないよ」というのは、常に念頭においてほしいです。家や学校がすべてではないと、大人になってめちゃくちゃ感じます。もうちょっと我慢すれば、動けるフェーズに行けるので、頑張ってほしいなと思います。

「負の立場に置かれている人ほど見ていただきたい作品」

収録中に心がけていることを教えてください。
堀江 太郎って、時代も背景もあって、普通の13歳だったら感じる必要のないつらさ、置かれる必要のない立場に置かれていて。この理解しがたい“かわき”の部分は持っていくようにしていました。奴隷のように扱われていた太郎のけなげさ、これまでの人生の壮絶さみたいなものを、友達ができたときや、美味しいご飯にありつけたときに、喜びを表現することで逆説的に届けられるんじゃないかなと思って、“かわき”を意識しています。楽しそうにしている太郎を見たときに、「よかったね」と思ってもらえるよう、心がけていました。
「青のミブロ」の放送を楽しみにしている方たちへメッセージをお願いいたします。
堀江 めちゃくちゃ熱い内容になっていて、この物語を通して自分の中で何かに目覚める内容になっているんじゃないかと思っています。「もしかしたら自分に何もないかも」とか、「夢はあるけれど環境が邪魔をしている」とか、色々な負の立場に置かれている人ほど見ていただきたい作品だなと思っています。この作品を見終えた後に、光が灯るような作品になっているんじゃないかと思うので、ぜひ見ていただきたいなと思っています。
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