中学生のときに「声優になりたい」と決意
- ― どんな「13歳」でしたか?
- 堀江 色々な意味で制約の多い生活でした。めちゃくちゃ家が貧乏だったので、選択肢が狭まって。「ウチはあまりお金がないから、こういうことはできないよな」と決めつけをして、全然楽しくない中学校生活を過ごしていました。どんどん自信もなくなってきて、周囲とのコミュニケーションをあまり取らないようになっていったのも、13歳の頃だった気がしています。小学生の頃は、自分から色々な人に声をかけたりしていたんですけど、些細なところで、“持っている人”と“持っていない人”の違いをなんとなく肌で感じたりしていくうちに、どんどん塞ぎ込んでいきました。
- ― 当時、夢や目標は持っていましたか?
- 堀江 はい。中学生のときに「声優になりたい」と言っていました。(周囲に)夢を打ち明けたりするのは高校の頃ですが、親からは「なれるわけない」と言われて。先生からも基本的に応援してもらえなかったんです。なので、親と教師を騙して(笑い)“大学に進学する”というレールを歩み始めました。「僕はそこしか考えていませんよ」という風に装って、大学に通いながら自分でお金をためて、声優の養成所に勝手に入って。勝手に声優になりました!(笑い)。
- ― 声優になりたいと思ったきっかけはありましたか?
- 堀江 アニメ「名探偵コナン」で、声優の高木渉さんが、子供の「元太くん」と大人の「高木刑事」という全く違う役をやられていて。あるときは、その二人が会話していることもあって、そこで声優という仕事を意識しました。もともと声にコンプレックスがあって、からかわれることもあったんです。声優になるために色々調べていくと、「普通に学校生活を過ごすのがいい」とアドバイスが書かれていたので、あえて何もしない普通の学生生活を送っていました。とはいっても、友達とかそんなにいなかったので、ただの陰気な中学生が、ただただ日々を過ごしていた、というだけなんですけど……。それでもやっぱり意味はあったと思います。卑屈な部分や、鬱屈としたところって、今も役をやるときにすごく理解できて演じられるのでよかったのかなと思います。とはいっても、若ければ若いほど、色々な物事が有利に動くというのは、すごく感じていて。もっと早く養成所にも通えたらよかったなというのはあります。もし応援してくれる環境があるなら、早めに動いておくのもいいと思います。早い段階から見切りをつけられることができるだろうし……。でも、動けなかったとしてもそれは間違いじゃなくて、僕みたいに自分でちゃんと動けるようになってから動くのも遅くはないと思います。
- ― “今の自分”について、“13歳の頃の自分”はどんな風に思うと思いますか?
- 堀江 えー難しい! どうだろう……。この仕事ができている点では、夢をかなえているように見えるから、「よかったねー」って思うのかもしれないです。ただ、いざ声優になってみると、学生のころに抱いていた声優のキラキラしたイメージは、ファンのために見せてくれていた部分だったのだと感じます。声優ということでキラキラしているように見えるかもしれませんが、その“キラキラ”は1割にも満たないぐらい(笑い)。残りの9割は、苦しみしかないんだ……と。実は大学に通っていた頃、就職活動をしていて、内定をいただいていたんです。そのタイミングと、「アイドルマスター」という作品で初めてオーディションに受かったタイミングが同じくらいで。もしあの頃に戻れるなら就職しているかもしれないです(笑い)。「本当だったらこんなふうにできているはずだった」と自分が思い描く理想像とのギャップがどうしてもできてしまうところがあって。そうしたときに結構僕は折れてしまうタイプなので、今はその苦しみとどう向き合いながら、この仕事をやっていけばいいんだろう?と考えているところではあります。生半可な覚悟でなるべき仕事ではなかったなと。
- ― 今、新しい一歩を踏み出そうとしている“13歳たち”にメッセージを送るとするなら?
- 堀江 この記事を読んでいる人に伝えたいのは、いま夢を追いかけている人、その情熱は本当に正真正銘の本物だと思うんです。その気持ちを本物のまま、持ち続ける覚悟があるんだったら、その夢を一番に優先して、これからの人生を歩んでほしいなって思いますね。でも、まわりの人に夢を応援してもらえない人の方が多いと思うんです。若いうちってそれがすべてだと思いがちですが、「今自分が置かれている環境が世界じゃないよ」というのは、常に念頭においてほしいです。家や学校がすべてではないと、大人になってめちゃくちゃ感じます。もうちょっと我慢すれば、動けるフェーズに行けるので、頑張ってほしいなと思います。
